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著:小岩井 弥 |
オッズ系トンデモ競馬本
オッズを予想に役立てようとする競馬必勝法は数々あるが、大抵は、オッズの動きから過剰投票を見抜く、あるいは、あるオッズパターンから統計的(※)によく出現する組み合わせを狙う、といったものである。
(※:それが統計学的に正しいのかどうかは置いといて)
しかし、独創性という点では「99%勝てるオッズ最強理論」の右に出るものはいない。おそらくこういう切り口でオッズを語っている競馬本は皆無なのではないか、という斬新さに加え、その説明のトンデモっぷりが見事なハーモニーを醸し出している。
まさしく第一級のトンデモ競馬本なのである。
まえがきで著者は、
何レースかに1レース、確実に、それこそ99%、必ず馬券が取れるオッズパターンというのが存在するのである。 ~ 中略 ~ 特大万馬券を一点で的中させてみたい、確実に馬券で儲けてみたい。相容れることのない、このふたつの馬券ニーズに応えることができる、唯一の馬券戦略であると私は自負している。
と書いている。
ここまで自信たっぷりな必勝法っどうなんだろ?と逆に心配になってくるが、予想の根幹は実にシンプル。
「一番人気からのオッズ比率とシンガリ人気からのオッズ比率に対象性が認められた馬を買う」
ただこれだけ。
しかしこれだけの説明だと何がなんだかよく分からないので、93年の安田記念を例に説明しよう。まずオッズ順に馬を並べる。次に1番人気のオッズで2番人気以降のオッズを割っていく(下記の表のA列に該当)。そして、同じようにシンガリ人気のオッズを一番人気以降のオッズを割っていく(B列)。
単勝オッズ A列 B列
ニシノフラワー 2.7 1 81.37
ヤマニンゼファー 5.4 2.00★ 40.68
シンコウラブリイ 5.5 2.03 39.94
キットウッド 6.0 2.22 36.61
シスタートウショウ 10.3 3.81 21.33
ムービースター 13.4 4.96 16.39
ロータスプール 16.2 6.00 13.56
カミノクレッセ 34.3 12.70 6.40
トシグリーン 38.4 13.07 6.22
キョウワホウセキ 43.1 15.96 5.09
エーピージェット 56.9 21.07 3.86
マイネルヨース 81.9 30.33 2.68
トモエリージェント 97.2 36.00 2.26
イクノディクタス 109.6 40.59 2.00★
プラチナシチー 174.3 64.55 1.26
ハヤブサオーカン 219.7 81.37 1
A列の一番下とB列の一番上は同じ数値(ここでは81.37)になるのでこれは除くと、ヤマニンゼファーのA列の数値は「2.00」、イクノディクタスのB列の数値は「2.00」と一致している。これが著者の言う「オッズの対象性」であり、この馬同士で決る可能性が高い、ということになる(らしい)。そして実際、ヤマニンゼファーとイクノディクタスが1、2着して、馬連は68,970円の大万馬券となった。
なんで?ただの偶然じゃないの?
そう思われる方も多いと思うが、僕も全くの同感だ。ただの偶然ではない、というその根拠を知りたいところだが、著者は「なぜオッズの対象性が激走に繋がるのか」を明確に説明しない。
サイン系の馬券必勝法ですら、なんでそーいうことになるのか、ということは事細かく解説されている。むしろ偶然で片付けるべき事象をいかに説得力を持たせられるかってのがサイン系の真骨頂であり、後付上等!の結果論が展開されるのが常だ。
「99%勝てるオッズ最強理論」ではその理論にどうやって説得力を持たせるか?
筆者が出した答えが「オカルト」だったのである。ポルナレフ風に言うと、
「あ...ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
おれは競馬本を読んでいると思ったらいつのまにかオカルトだった
な... 何を言ってるのか わからねーと思うが
おれも何をされたのかわからなかった...
頭がどうにかなりそうだった...
JRA陰謀論だとかエセ科学だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ...」
P87から91にかけて、ピタゴラスの話が延々と続く。まさか競馬本で黄金比という単語を見るとは思わなかった。実際の紙面はこんな↓感じ。
http://keiba-library.com/book/archives/images/4895950700_1.jpg
http://keiba-library.com/book/archives/images/4895950700_2.jpg
しかしそんなのは序の口。P91~P115にかけては、1から18に秘められた数字の意味について延々と解説される。しかも申し訳程度に競馬に絡んだエピソードが入るものの、ほとんどの場合、競馬とは意味の無い説明が繰り広げられる。
いくつか紹介してみると、
「4:時間を秩序づける数」 4は新月、上弦、満月、下弦の四相に代表されるように古来より"時間の秩序"を司る数とされてきた。1年の中で最も日が長い夏至、短い冬至、昼と夜が同じ春分、秋分の4つの区切りなどもこの時間の秩序と言えるだろう。
4への関心が最も高かったと見られるのがピタゴラス学派である。明確で分かりやすい4の幾何学図形、四角形は当時から完全で素晴らしい図形とされていた。「理想的人間は体も魂も四角な人」と唱えたニーチェなどは、ピタゴラス学派と同じ様な考え方であったのかもしれない。
世界の中で4を「シー」「よん・し」と読む中国・日本では、死と同音であることから、4を嫌い避ける傾向があるが、「四季折々」「四天王」「四強」など言葉の中ではよく使われている。
競馬で「4」にお目に掛かることはあまりないが、4が時間を秩序付けるという数であるとのスタンスに立てば、遊び心から様々なシチュエーションで馬券を楽しむこともできるだろう。
こういった数字の解説が18まで延々と続くのだが、小岩井氏の暴走はどんどん加速していき、14くらいになるともう競馬のことなんか眼中に無くなってくる
「14:月に関連する重要な数」 14は月と関連する重要な数である。満月までに14日を要するからで、イスラムのように月と密接な関係のある地域では、大きな役割を果たしている。エジプトの伝説によれば、善神オシリスの体が十四部分に刻まれ、その各部分がまかれた地には祝福をもたらすと言われている。
また、14人の救難聖人(7の倍数)は、理性と結び付いた善の象徴であり、14は救難の象徴数とされている。
訳分からん(笑)
繰り返しになりますが、これ競馬の本ですからね。そしてこれらの説明が理論の説得力に繋がっておらず、悲しいくらいにスカスカな理論をさらにスカスカに演出しているのである。
僕もライターとして本を何冊か出しているので、小岩井氏の気持ちはよく分かる。とにかくページ数を埋めるために必死だったのだろう。しかしこれはひどい。
正味140ページの本で、必勝理論について語られているのはたかだか20ページ程度。あとは訳分からん、数のうんちくやら、過去10年のGIの成績表といった全く本筋に関係無い話で埋められている。
今までに出会った競馬本の中で、最も独創的で、最もトンデモ理論で、最も中身スカスカ本が「99%勝てるオッズ最強理論」である。
ただ、この本で謳っている競馬理論が正しいのか誤っているのか定かではない。
検証をしてみると、本当に99%当たっているかもしれない。興味がある方は検証してみてはいかがでしょうか。(第2弾、第3弾と出ていないので、おそらくダメだったんだろうなぁ)。
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