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著:金子 平蔵 |
最強の血統本にして、最凶の血統本
競馬の予想ファクターとして「血統」を重んじる人はどれくらいいるのだろうか?血統のみで予想する人は少数としても、血統を全く度外視して予想する人もそうそういないだろう。
多かれ少なかれ競馬ファンの予想に影響を与えているのが「血統」なのだが、使いどころが難しいのもまた血統である。血統で、おおまかな好走傾向を見ることは出来ても、出走馬全馬に当てはめることは難しい。福島の芝1200m戦でサクラバクシンオー産駒が強いと言っても、サクラバクシンオー産駒全てが好走する訳ではない、ということだ。
また大抵の血統理論がぶつかる壁が、同じ父母から生まれた産駒は同じ能力を有するのか?ということである。ナリタブライアン・ビワハヤヒデは兄弟でGIを勝ったが、その弟のビワタケヒデはGIIIを獲っただけでターフを去った。
もちろん故障などのアクシデントで能力を発揮しないまま引退ということもあるだろうし、人間でも兄弟では性格、身体能力が異なるように、育った環境、個々の資質、調教によって差が生じる。しかし個体差を言い始めると「血統」自体についての存在意義も薄らいでしまう。漠然とした傾向で良ければ、出目でもいいはずだ。
血統の究極の目的は、その馬の血統背景から馬個体の能力・適正を導き出すことにあると思っている。父馬、母馬の現役時代の競争成績や産駒成績を頼りに、全馬のポテンシャルを目に見える形にする、そのことができれば、血統は確実に予想における頼もしい武器になってくれるはずだ。
しかし、既存の血統理論ではまだそこまでの域に至っていない(と思う)。
僕も血統で予想するのは嫌いではないのだが、実際にそれで馬券を取った記憶は無い。というか今のところ、予想の邪魔になっているケースが多い気がする。
前書きが長くなったが、そんな従来の血統理論の枠を突破決できそうなのが、「サラブレッド推定遺伝」である。この理論では、現在のサラブレッドは、6種類の「因子」を受け継いでいる、としている。
・セントサイモンに由来する「パワー(1)の因子」
・ファラリスに由来する「パワー(2)の因子」
・ストックウェル、ラタプランの「回復力因子」
・ストックウェルの「持続力因子」
・セントサイモンの「スピード因子」
・ニューミンスターの「瞬発力因子」
全てのサラブレッドは、この6種類の因子の内、4種類の因子を持っている。
受け継いだ因子の組み合わせにより、サラブレッドの能力や距離適正・芝ダート適正が決ってくるのである。
また子供は、父馬が持っている4因子の内の2因子、母馬が持っている4因子の内の2因子を受け継いで4因子を持つ。ということは、全兄弟であっても父母から受け継ぐ因子が異なることもある、ということだ。全兄弟であっても能力やタイプが異なる理由はそこにある。
また受け継いだ4因子も、活発・不活発な因子がありその影響力の違いが競走馬の能力として表れる。父サンデーサイレンスであってもその産駒は長距離を得意にした馬もいれば、ダートで活躍した馬もいる。そういったキャラクターの違いも、受け継ぐ因子と活発性の違いに起因する、金子氏は言う。
つまり、出走馬の因子構成とその影響度を解き明かすことができれば、個々の競争能力をある程度把握することができるということではないか。ヘイロー系がどうの、ノーザンダンサー系がどうの、と大雑把な括りでしか語れない血統論に辟易していた僕は、ドキドキしながらページをめくったことを覚えている。
しかし、そのドキドキ感はソッコーで打ち砕かれる。
とにかく難解なのである。いかんせん専門用語や独自理論に対する説明の絶対量が足りていないので、この血統理論を理解することは困難を極める。なにしろ理論の説明は最初の20ページだけで、残りの120ページが過去の名馬の血統表解説に費やされている。基礎知識が足りていないのに実例を説明されても理解できるわけが無い。
ちなみに上で述べた、「6種類の因子のうち4種類で構成されていて云々」なんて説明すら本の中に出てこない。それらは著者のご子息が運営されているサイトに乗っている情報なのである。
ご子息のサイトではまだ分かりやすく説明されているが、そこに書かれていることをよく理解したつもりで、あらためて「サラブレッド推定遺伝」を読んでも、やはり理解出来ない、と言えば、どれだけ難解な内容か分かっていただけるだろうか。エンジンの図解だけで内燃機関のメカニズムを理解しろ、と言われているに等しい。
この難解さは、著者というよりも、編集者の責任が大きい。
編集者は一番正直な読者でなくてはならないのに、どんな読者像を思い浮かべてこの本を編集したのですか?一読者としてこの本を理解できましたか?と問い質したいくらいだ。
(発行元が文芸社なので自費出版に近いのかもしれない)
KKベストセラーズ、白夜書房といった競馬関連書籍を多数出しているところなら「血統予想の大革命!」みたいな煽りを入れられるだろけども、もっと分かりやすく仕上げてくるだろう。
埋もれさせるには惜し過ぎる理論なだけに、もっと分かりやすく解説した第2弾を切に期待する次第だ。素材は良いのに調理で失敗している感が返す返す悔やまれる。
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